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会社検診などで尿中ケトン体陽性を指摘され、糖尿病の疑いということでご相談に来られることがあり、今回はケトン体についての考察です。 |
ケトン体とは |
β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの総称です。糖質の摂取量が極端に少ない飢餓時や、糖が体の中でうまく利用できない糖尿病の状態のときに、ケトン体は肝臓で生成され、脳や心臓等の肝外組織に運ばれて利用されて、糖質の他の第2の脂質由来のエネルギー源となります。飢餓状態や糖尿病時に生命を維持してくれるケトン体ですが、著明に増加しすぎると、血液が酸性(ケトアシド-シス)となり、糖尿病増悪時の脱水、中枢神経障害、昏睡、等の原因になります。 |
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糖尿病の急性増悪時の病態のまとめ |
糖尿病は細胞の飢餓状態で、その原因はインスリンの分泌低下またはインスリンの作用の低下があり、また飢餓状態や、糖尿病ではグルコースを利用できないので、脂肪組織から脂肪酸が肝臓でβ酸化され、多量のアセチルCoAが産生され、肝臓においては糖新生でオキサロ酢酸を消費し、アセチルCoAはクエン酸を合成することができず、ケトン体へ代謝されるような血液が酸性に傾くような危険な状態(ケトアシドーシス)に陥るということになります。 |
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糖尿病性ケトアシドーシスと高血糖性高浸透圧性昏睡の比較
その比較を示しました。 |
通常糖尿病性ケトアシドーシスは2型糖尿病では以前は起こらないとされていましたが、2型糖尿病患者に起こる清涼飲料水性ケトアシドーシス(ペットボトル症候群)が以前より注目され、ペットボトル飲料を多量に飲むことにより、インスリン分泌機能を有する2型糖尿病患者でもケトアシドーシスが起こることを知っておかねばなりません。その病態としては2型糖尿病の人が糖分を含む清涼飲料水を多飲すると、さらに血糖が上昇し、口喝がさらに強まるなどの悪循環に陥り、著しい高血糖とケトアシドーシスを起こす病態です。肥満の若い男性に多いです。 |
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ケトン体のまとめ |
以上ケトン体に関して病的意義を中心に解説しました。通常糖質が体の主なエネルギー源ですが糖質量が極端に少なくなったり、飢餓状態に陥ったり、糖尿病の増悪でインスリンの作用不足が起こったりしたときの緊急時に体が脂肪を分解して、第2のエネルギー源としてケトン体を生成するものです。ケトン体は肝臓で脂肪酸から作られて、糖質の不足があると、脂肪酸として血中に放出され、全身の細胞に運ばれ、エネルギー源として、特に脳の非常に重要な代替エネルギ-となります。ケトン体のメリットとしてケトン体が生成されるということは体が脂肪を分解して、エネルギーを作る状態で、脂肪燃焼を促進するということにつながるためダイエットにも有効と考えられます。アメリカ中心にかなり糖質制限をして、ケトジェニックダイエットが注目されています。ただ日本人は摂取エネルギーの60%を糖質より摂っていることと、長期間の安全性、アメリカのような超肥満を含めた肥満度がそれほど多くないので、管理を継続的に可能かは疑問符がつきます。ただ日本でもプロアスリートがパフォーマンスの維持のため効率の良い脂質をエネルギーとして燃やし続ける体に変換するためにケトン体を活用する方法に取り組んでいる人もいます。ケトン体を食べて直接体内に入れて眠っていた脂肪燃焼回路動かすことで、内臓脂肪を減らすという論文もあります。 |
ケトン体の問題点 |
ケトン体が体内で増加(極端な糖質制限)すると、ケトン体の1つのアセトンが呼気や汗として、発酵した甘酸っぱい匂いを発することがあります。 |
ケトーシスとケトアシドーシスの相違点 |
以上より、ケトン体が増えること自体健康な人にとって必ずしも危険なことではないというお話でしたが、ケトーシスと、ケトアシドーシスは全く異なる状態であり、それを理解することが大事です。ケトーシスは体が脂肪を燃焼させ、ケトン体をエネルギー源として、利用可能な生理的状態で糖質制限、断食、ケトジェニックダイエット等意図的に誘導されるもので、健康な人がこの状態になることは基本的には問題はないです。血中のケトン体の上昇も比較的軽度で、血糖値の上昇もなく、血液のPHは正常です。ところがケトアシドーシスは主に1型糖尿病等に起こる重篤な代謝異常で極端なインスリン作用不足により、細胞内でブドウ糖の利用ができなくなり、大量のケトン体が生成され、血液が酸性に傾き、意識障害や昏睡を引き起こし、著明な高血糖、消化器症状、脱水症状があり、病的な状態で生命にかかわることも考えられます。 |
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